「心の余裕スペース」のつくり方 / 2026年10月号

8月号では「家のお仕事を任せる」ということ、9月号では「いつもと違う」体験の効用についてお話ししました。
その二つの記事へのご感想として、「一見失敗に見える出来事が、新たな観察や発見につながり、結果的に失敗ではなくなった」
という素敵なエピソードをお寄せいただきました。
また、「いつもと違うことを楽しめる視点と心の余裕を持ちたい」という、とても共感できるご感想もいただきました。
今月は、そんな「失敗」を楽しめる「心の余裕」のつくり方について、考えてみたいと思います。
▶ 「失敗」ではなく「いつもと違う結果」
私たちは何かをするとき、無意識のうちに「こうなるはず」「こうできるはず」という結果を思い描いています。
そして、その予想どおりにならなかったとき、つい「失敗した」「うまくいかなかった」と考えがちです。
でも、「思ったとおりにならなかった」ことは、必ずしも「失敗」ではありません。
予想と違う結果になったからこそ、新たな疑問や発見が生まれることもあります。
予想と違うことが起きたとき、すぐに「成功」「失敗」の判定をするのではなく、「いつもと違う結果になった」と、まずは出来事をそのまま捉えてみる―そうすることで、「どうしてこうなったんだろう?」と冷静に観察したり、「こんなふうになるんだね!」と新しい発見を楽しんだりすることができます。
こうした経験を重ねることで、予想と違う結果をすぐに「失敗」と捉えない思考習慣が少しずつ身についていきます。
やがて、いわゆる「失敗」をしたときにも、「いつもと違うことが起きた」「面白いことになったね!」とむしろ楽しんで捉えられるようになるかもしれません。
▶ 「失敗」を楽しむ「心の余裕」
とはいえ、いつもそんなふうに考えられるわけではありません。
時間に追われているとき、疲れているとき、子どもが予想外のことをすると、つい「もう!」「どうしてそうなるの?」と言いたくなることもあると思います。
一方で、気持ちに余裕があるときなら、「あれ? 面白いことになったね!」と笑って受け止められるかもしれません。
同じ出来事でも、そのときの心の状態によって受け止め方は変わります。
気持ちに余裕があれば、予想外のことも面白がることができますが、余裕がないと、ついイライラしたり、ネガティブに捉えたりしてしまいます。
私たちの心には、こうした出来事をおおらかに受け止めたり、楽しんだりするための余白=「心の余裕スペース」が必要なのです。
▶ 「心の余裕スペース」をつくる方法
では、どうすれば「心の余裕スペース」をつくり、保つことができるのでしょうか。
大きく分けると、二つのアプローチがあります。
一つは、余裕スペースを「減らさない」こと、もう一つは余裕スペースを「大きくする」ことです。
それぞれを「出来事」と「捉え方」の二つの視点から考えてみましょう。
A. 余裕スペースを減らさない方法
① 出来事
ネガティブな出来事が起こると、心にストレスがかかり、余裕スペースは少しずつ減ってしまいます。
そのため、心の負担になりそうな出来事を、あらかじめ減らしておくことも、余裕スペースを保つ一つの方法です。
たとえば、こんな工夫ができます。
完璧にやろうとせず、「ここまでできれば十分」とMinimum目標を決めておく。
疲れている日は、掃除や片づけを思い切って後回しにする。
苦手な人との付き合いや、気が進まない集まりを無理に引き受けない。
SNSを見て他人と比較してしまうなら、見る時間を減らす。
もちろん、すべての嫌なことを避けられるわけではありません。
でも、自分で選べることについては、あえて負担を増やさない選択をしてみる。
それだけでも、心の余裕スペースの消耗を抑えることができます。
② 捉え方
もう一つ、出来事そのものだけでなく、その捉え方によっても、心の余裕スペースの減り方は変わります。
特に他者の行動や天候など、自分ではコントロールできないことに対して、必要以上にネガティブな意味づけをしないことが大切です。
たとえば、楽しみにしていたお出かけの日に雨が降ってしまったとき。
「せっかく楽しみにしていたのに!」「どうして今日に限って雨なの?」と考えると、出かける前から気持ちが沈んでしまいます。
一方で、「雨の日ならではの楽しみ方もあるかも」「いつもと違う景色が見られるかもしれない」と考えれば、少し気持ちが軽くなるかもしれません。
もちろん、雨が降っているという事実は変えられませんし、予定を変更しなければならないこともあるでしょう。
でも、自分では変えられない出来事に対して、心の余裕スペースを奪われすぎないことも大切です。
残念な気持ちになるのは自然なことです。
ただ、そこにとらわれすぎず、「この状況で楽しめることは何だろう?」と考えてみる。
起きた出来事そのものと、それに対する自分の受け止め方は別のもの―そんなふうに考えてみることも、心の余裕スペースを守る大切な習慣です。
B. 余裕スペースを大きくする方法
① 出来事
嬉しいことや楽しいことなど、心が満たされる出来事があると、心の余裕スペースも大きくなります。
心に余裕をつくるために、特別なことをする必要はありません。
日常のちょっとした時間に、気持ちが明るくなることを取り入れてみましょう。
たとえば、
好きな飲み物をゆっくり味わう。
お気に入りのお菓子を一つ楽しむ。
子どもと一緒に笑ったり、何気ない会話を楽しんだりする。
いつもの道に咲く花や木々の変化から、季節を感じる。
いつも頑張っている自分に「今日もお疲れさま」と言ってみる。
誰かのために頑張ることも大切ですが、自分自身が楽しんだり、休んだりすることも同じくらい大切です。
まとまった時間を確保しなくても、ほんの少し自分の好きなことをするだけで、気持ちが満たされることがあります。
心が満たされていると、子どもの予想外の行動にも、少しおおらかに向き合えるようになります。
② 捉え方
心の余裕スペースを大きくするためには、普段から日常の中にある小さな幸せに、意識的に目を向ける習慣も役立ちます。
私たちは、何か特別に嬉しいことや大きな成果があったときには幸せを感じます。
一方で、毎日の生活の中にある小さな幸せは、当たり前のこととして見過ごしてしまいがちです。
たとえば、
いつも通る道で、きれいな花が咲いていた。
おいしいコーヒーを飲んで、ほっと一息つけた。
家族で食卓を囲み、何気ない会話を楽しめた。
仕事で同僚が手伝ってくれて、ありがたいと感じた。
今日も家族みんなが元気に過ごせた。
こうした日常の小さな「嬉しい」「楽しい」「ありがたい」を見つけること。
大きな幸せを待つのではなく、目の前にある小さな幸せに気づくこと。
―そんな習慣が、日々、心の余裕スペースを少しずつ大きくしてくれます。
▶ 「心の余裕」が、子どもの挑戦を支える
「家のお仕事」や「いつもと違う体験」に取り組む機会をつくるとき、思ったとおりにできなかったり、予想外の結果になったりすることもあるでしょう。
でもそんなときに、大人が少し余裕を持って見守ることができ、「失敗した」と捉えるのではなく「いつもと違う結果になったね」と捉えることができたら、
子どもは「失敗しても大丈夫」「まずはやってみよう」と思えるようになります。
そして、親子で一緒にその結果を面白がることができたら、そこには新しい発見や学びが生まれるでしょう。
引き続き、少し肩の力を抜きながら、子どもたちの挑戦や発見を一緒に楽しんでいきましょう!


