林明子さんへ感謝を込めて / 2026年7月号
- 7月13日
- 読了時間: 4分

先日、絵本作家の林明子さんがご逝去されました。
心よりお悔やみを申し上げます。
のぼちーでは毎年、レッスンで読む『年間絵本リスト』を作成していますが、その中には必ずと言っていいほど林明子さんの作品が入っています。
林明子さんの絵本には、絵にも文章にも、その温かなお人柄がにじみ出ていて、ページを開くと心がふっと柔らかくなり、優しい気持ちになります。
また、日常にある小さな挑戦や成長の切り取り技術の高さも大きな魅力です。
子どもの頃に誰もが経験した何気ない出来事や、その時は言語化できなかった気持ちを、柔らかな絵とぴったりの言葉で描いてくれます。
読んでいると、子どもの頃へタイムスリップしたような気持ちになり、懐かしさと温かさに包まれます。
今月は感謝と追悼の気持ちを込めて、のぼちーでも大切にしている林明子さんの作品をご紹介したいと思います。
▶ おつきさま こんばんは
「おつきさま、こんばんは」
このセリフを、子どもから何度聞いたことでしょう。
絵本の魅力の一つは、物語の中だけで終わらず、その言葉が親子の日常会話の中に自然と溶け込み、何気ない毎日を豊かにしてくれることです。
夜空のお月さまに親しみを込めてご挨拶する姿は、とても愛らしく、親になって初めて味わえる幸せの一つかもしれません。
本作は赤ちゃん絵本シリーズ『くつくつあるけのほん』4部作の最後の一冊。
他の3冊も、赤ちゃんの日常を明るく朗らかに切り取っている魅力的なシリーズです。
▶ こんとあき
おばあちゃんの家へ一人で向かう、子どもにとっての大冒険を描いた作品です。
ぬいぐるみの『こん』が、優しく頼もしく『あき』を支えながら旅をします。
幼い頃、大切なぬいぐるみを擬人化し、心の支えにしていた記憶がよみがえる方も多いのではないでしょうか。
旅の途中では思いがけないアクシデントが次々と起こり、そのたびに、あきと一緒に胸がきゅっと締めつけられます。
だからこそ、おばあちゃんが二人を温かく迎えてくれる場面には、心からほっとします。
不安と心配、そして安堵を巧みに描きながら、読者をぐっと物語の世界へ引き込む物語展開力も、本作の大きな魅力です。
赤ちゃんのあきをお世話するこんや、一緒にお風呂に入るこんの姿も、本当に愛らしい場面のひとつ。
定期的に癒しを求めて読みたくなる一冊です。
▶ はじめてのおつかい
筒井頼子さんとの名コンビによる作品。
『みいちゃん』は、お母さんに頼まれて初めて一人でおつかいに出かけます。
一人で歩くいつもの道、今日はドキドキの連続。
「お母さんの役に立ちたい」という思いと勇気、そして不安が交錯する様子が丁寧に描かれ、読み手もみいちゃんと一緒にドキドキしながら物語を読み進めていきます。
筒井頼子さんの絶妙な言葉選びと、林明子さんの柔らかく温かな絵が見事に重なり合い、子どもの心の動きを鮮やかに描き出しています。
お二人の合作はどれも言葉と絵の描写が温かく、物語展開技術の高さが光る作品ばかり。
ぜひ他の作品も楽しんでみてください。
▶ いもうとのにゅういん
こちらも筒井頼子さんとの合作。
『あさえ』が妹の入院を通して、成長する様子を描いた作品です。
『あさえとちいさいいもうと』の続編ともいえる本作は、少し大きくなった妹の行動に怒るシーンからスタートします。
しかし妹が入院することになり、あさえの感情は一変します。
妹を心配する気持ち、妹のために何かしてあげたい想い、お姉ちゃんとして頑張らなければという責任感、そうはいってもまだ幼い自分自身の気持ちとの間で揺れ動きます。
第一子特有の複雑な感情が入り交じる様子が見事に描かれた名作です。
▶ はじめてのキャンプ
こちらも頑張りたい小さい女の子の成長物語。
『なほちゃん』は周りのお兄さんお姉さんたちに「ちっちゃいこはだめ」と言われても怯みません。
一人前であることを示したくて、一生懸命頑張ります。
寝る場所を作ることも、ご飯を作ることも、みんなで協力しながら過ごすキャンプ。
夜のキャンプファイヤーの楽しさも、生き生きと描かれています。
子どもの頃、この絵本を読んで「キャンプに行ってみたい!」と憧れた方も多いのではないでしょうか。
絵本から児童書への橋渡しとなるような作品で、限られた色使いにもかかわらず、登場人物の感情や躍動感が見事に表現されています。
最後に「ちゃんとキャンプできたよ!」と誇らしげに笑うなほちゃんの笑顔は、自分でやり遂げた経験が子どもの自信の土台になることを教えてくれます。
読んでいるこちらまで、思わず笑顔になってしまう一冊です。
子どもの頃に読んだ絵本を大人になってから読み返すと、今度は親としての新しい発見があります。
ぜひお子さまと一緒にページをめくりながら、絵本を題材に親子で会話を楽しんでみてください。
きっと、絵本の温かさとともに、親子の時間もより豊かなものになるはずです。
改めまして、たくさんの素敵な作品を届けてくださった林明子さんに、心から感謝するとともに、ご冥福をお祈りいたします。



